published a book『ウィキペディアでまちおこし』刊行直前セミナー開催

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2023年12月、ウィキペディアタウンについて主に紹介したおそらく世界で初めての1冊、『ウィキペディアでまちおこし みんなでつくろう地域の百科事典』という本を出版しました。

■刊行直前イベントの開催 Author of“City Revitalization with Wikipedia” to hold talk event

出版のきっかけは、2022年8月。「図書館で地域を立て直す」がコンセプトのWebセミナー「本の場」において、4週連続でウィキペディアタウンを紹介したことでした。その第2回目の時、視聴されていた人が「本で読みたい」と言われたことから、様々な人が、このウィキペディアのアウトリーチ活動を社会に広く紹介する1冊の刊行に向けて動き出しました。1年以上の執筆準備を経て、いよいよ刊行が決まった1週間前には、本を紹介するトークイベントも開催されました。

■すべてはLibrary of the Yearから始まった

日本の先進的な図書館的活動を顕彰する「Library of the Year」を、「ウィキペディアタウン」という地域の情報を文献調査しオンライン百科事典の項目として発信する活動が受賞したのは、2017年のことでした。折しもその年、たまたま仕事の実践報告で図書館総合展に初参加していた私は、偶然にもLibrary of the Yearの最終選考会を見学に来た複数名のウィキペディアンと、名刺交換をする機会に恵まれます。私がウィキペディアタウンを知ったのはこの時が最初でした。

ちょうどその頃、学校図書館司書として高校生の多様な調べ学習に関わっていた私には、ひとつ大きな悩みがありました。それは、私がどんなに心血を注いで役立つ図書資料を用意しても、一部の生徒はまったく手に取らず、インターネット検索で簡単にヒットする「ウィキペディア」なるいい加減なウェブサイトばかり鵜呑みにしていたということです。それまでは独り悔し涙を飲んでいた私ですが、そんなウィキペディアを自分も編集できるとなれば話は別です。虎穴に入らずば虎児を得ず、このうえは先回りして生徒が検索しそうな授業課題をウィキペディアに立項しておき、どうせ本は役に立たないしと最初からネット頼みの生徒の肩を「それについては、もっと詳しい図書資料がこっちにあるよ」とカッコよくたたくためだけに、図書館資料をベースにウィキペディアに地域情報を発信することを決意します。

しかし、一言で「地域情報」といっても多種多様なもの、ひとりで文献調査し情報をまとめていくのは、いかに豊富な文献資料を備える数々の図書館を活用しても容易ではありません。だれか手伝ってくれる人はいないかな?と周囲を見回してみれば、まちおこしや環境保護活動、伝統産業の担い手、移住促進に携わる行政マン、そしてウィキペディアン達、様々な人々が様々な立場からこの活動に意義を見出し、協働することができました。そんなこんなで2018年秋にスタートした丹後地方のウィキペディアタウンはすでに5年以上、数十回の開催を重ね、気が付けば全国屈指の企画開催頻度と多様性が備わっていたと言っても過言ではないでしょう。

漱石の猫, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

 「知る」ということは、すべての始まりの出来事である。本書で繰り返し述べているこの言葉通り、本書が多くの読者にとっての始まりの1冊となることを願い、『ウィキペディアでまちおこし』では、「ウィキペディアタウン、はじめました」「読者から編者へ」「イベントから日常へ」の三部構成で、私自身の経験したウィキペディアタウンを詳説した13本のエッセイと、そのなかで説明しきれなかったサイドストーリーを含む13本のコラムを通して、ウィキペディアタウンの魅力と課題、そして、インターネット百科事典「Wikipedia」の魅力と課題を紹介しました。2013年に横浜で始まった日本版ウィキペディアタウンの発展と概要を抑えつつ、全国各地の事例から編集イベントで起こりうる様々なトラブルへの対処法を紹介するマニュアルの役も果たしつつ、現在そしてこれからのウィキペディアタウンを俯瞰した1冊でもあります。

ウィキペディアは、誰でも自由に編集し利活用できる、誰にとっても身近なコンテンツです。だからこそ、より多くの人のために役立つ優れたコンテンツとして成長していってほしい。そのためには、豊かな教養と健全な精神に育まれた不特定多数の皆さんの協力が必要です。本書がこれまで読者であった皆さんがウィキペディアで自ら発信する一助となること、あるいはそうした人々をサポートしたり、“場”を提供する企画者となる一助になれば幸いです。

(本稿の内容の後半は、2024年1月1日配信のメールマガジン「ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)」でもCCBYで紹介しています。)

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