「リラ (楽器)」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
出典追加、小加筆
タグ: ビジュアルエディター モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集
m ウィキ化、問題の指摘
タグ: 差し戻し済み モバイル編集 モバイルアプリ編集 iOSアプリ編集 曖昧さ回避ページへのリンク
1行目: 1行目:
{{出典の明記|date=2023年9月}}
[[Image:Apollo black bird AM Delphi 8140.jpg|thumb|リラを持つ[[アポロン]]]]
[[Image:Apollo black bird AM Delphi 8140.jpg|thumb|リラを持つ[[アポロン]]]]
'''リラ'''、'''リュラ''''''ライアー'''、'''ライア'''([[古典ギリシア語]]:{{lang|grc|λύρα}}、[[ラテン語|羅]]:lyra[[英語|英]]・[[フランス語|仏]]:lyre[[ドイツ語|独]]:Lyra、Leier、[[イタリア語|伊]]:lira)は、[[弦楽器]]である。本来[[古代ギリシア]]の竪琴(撥弦楽器を意味するものであったが、後に形態の近いいくつかの楽器をこの名で呼ぶようになった。
'''リラ'''、あるいは'''リュラ''''''ライアー'''、'''ライア'''({{Lang-grc-short|λύρα}}、{{Lang-la-short|lyra}}{{Lang-en-short|lyre}} {{Lang-fr-short|lyre}}{{Lang-de-short|Lyra, Leier}}、{{Lang-it-short|lira}})は、[[竪琴]]に類する'''[[弦楽器]]'''である。本来[[古代ギリシア]]の[[撥弦楽器]]である「'''''竪琴'''''」を意味するものであったが、後に形態の近いいくつかの[[楽器]]をこの名で呼ぶようになった。


{{要出典範囲|古代ギリシャでは、読書会の際にリラを演奏したとされる|date=2023年9月}}。
[[中世]]ヨーロッパにおいてlyra、 liraなどの名称は、撥弦楽器のみならず似た形状の弓で弾く擦弦楽器にも用いられるようになった。これには[[フィドル]]から発展した一族も含まれる。一方、lyra、 Leierは[[ハーディ・ガーディ]]を指すようになり、Leierはさらに転じて「手回しオルガン(バレル・オルガン)」の意味にまでなった。また別に、(古代ギリシアの)リラ型の枠を持った打楽器の一種でリラを名乗るもの([[ベルリラ]])まで現れ、しばしば混乱を招いている。


== 名称 ==
[[古代ギリシア]]において朗読会はリラで伴奏された。
リラやそれに類する名称を持つ楽器は、起源こそ古代ギリシャの'''竪琴'''であるが、時代とともに楽器が変容し、あるいは名称が転用されてきた。したがって今日では、単に「''リラ''」というと、もはやどの「''リラ''」を指すのかわからない{{Efn|特に日本語では[[綴り字]]も同じになりやすく、さらに斜体で地の文と切り離す慣行もないため、注釈がないと読み手が[[ミスリード]]される原因となる}}。

[[File:Bruce Rogers Lyre edited gold.gif | thumb | 220x124px | right | alt= 食パンの袋を閉じるバッククロージャーの様な特徴的なカーブを持つ古代ギリシャの竪琴 | この[[リラ]]の形が引き伸ばされ、[[共鳴#楽器での応用]]させるために裏側が箱状に閉じられることで[[弦 (楽器)|弦]]が露出し、[[フィドル]]などとして[[弓 (楽器)|弓]]で弾けるようになる。]]
[[中世|中世ヨーロッパ]]において[[ローマ]]および[[イタリア]]の'''''lyra'''''や{{Lang|it|'''''lira'''''}}などの名称とは撥弦楽器のみならず、似た形状だが[[弓 (楽器)|弓]]で弾く[[擦弦楽器]]も指すようになった。これには[[イギリス]]における[[ヴァイオリン]]である'''[[フィドル]]'''から発展した一属も含まれる。

[[File:Hurdy-Gurdy Player Met DP890691.jpg | thumb | 220x124px | right | alt= ハーディ・ガーディの演奏者を描いた印刷モノクロ画 | [[ハーディ・ガーディ]]の演奏者<br>ヴァイオリンに回転盤をつけ、弓の代わりとすることで[[ドローン音|持続音]]を出せるようになる。]]
[[File:Barrel-organ 1.png | thumb | 220x124px | right | alt= バレル・オルガンの印刷モノクロ画 | [[手回しオルガン#バレル・オルガン|バレル・オルガン]]<br>ハーディ・ガーディのように回転する円柱のバレルに[[ピック|爪]]をつけ、弦や金属板などを爪弾いたり打ち鳴らしたりするオルゴールになる。]]
一方で[[ドイツ]]などにおける'''''lyra'''''や{{Lang|de|'''''Leier'''''}}とは、[[クランク (機械要素)|機械仕掛け]]のヴァイオリンである'''[[ハーディ・ガーディ]]'''を指すようになり、{{Lang|de|''Leier''}}はさらに転じて、ロールではなく円柱を回していた時代の「''手回しオルガン''」である'''[[バレル・オルガン]]'''を指すようにまでなった。

[[File:Cal Band en route to Memorial Stadium for 2008 Big Game 21.JPG | thumb | 220x124px | right | alt = 式典におけるマーチングで演奏するリルベラ奏者 | 演奏中の[[ベルリラ]]]]
[[18世紀]]以降の[[ヨーロッパ]]において、古代ギリシャは[[ロマン主義|ロマン]]の対象であり、こうした発想からか「''古代ギリシアの竪琴であるリラを模した枠''」をもつだけの手持ちの[[鉄琴]]に類する[[鍵盤打楽器]]として[[ベルリラ]]まで現れ、これを''リラ''などと略されることでしばしば混乱を招いている{{Efn|漢語表記では、竪琴も鉄琴も、あるいはオルゴールを意味する自動琴も[[琴]]であるが、これは手動で吹奏しない音階のある楽器の総称に過ぎず、端から添え字を前提とする}}。


== 歴史 ==
== 歴史 ==

2023年9月9日 (土) 06:35時点における版

リラを持つアポロン

リラ、あるいはリュラライアーライア古希: λύρα: lyra: lyre: lyre: Lyra, Leier: lira)は、竪琴に類する弦楽器である。本来、古代ギリシア撥弦楽器である「竪琴」を意味するものであったが、後に形態の近いいくつかの楽器をこの名で呼ぶようになった。

古代ギリシャでは、読書会の際にリラを演奏したとされる[要出典]

名称

リラやそれに類する名称を持つ楽器は、起源こそ古代ギリシャの竪琴であるが、時代とともに楽器が変容し、あるいは名称が転用されてきた。したがって今日では、単に「リラ」というと、もはやどの「リラ」を指すのかわからない[注釈 1]

食パンの袋を閉じるバッククロージャーの様な特徴的なカーブを持つ古代ギリシャの竪琴
このリラの形が引き伸ばされ、共鳴#楽器での応用させるために裏側が箱状に閉じられることでが露出し、フィドルなどとしてで弾けるようになる。

中世ヨーロッパにおいてローマおよびイタリアlyraliraなどの名称とは撥弦楽器のみならず、似た形状だがで弾く擦弦楽器も指すようになった。これにはイギリスにおけるヴァイオリンであるフィドルから発展した一属も含まれる。

ハーディ・ガーディの演奏者を描いた印刷モノクロ画
ハーディ・ガーディの演奏者
ヴァイオリンに回転盤をつけ、弓の代わりとすることで持続音を出せるようになる。
バレル・オルガンの印刷モノクロ画
バレル・オルガン
ハーディ・ガーディのように回転する円柱のバレルにをつけ、弦や金属板などを爪弾いたり打ち鳴らしたりするオルゴールになる。

一方でドイツなどにおけるlyraLeierとは、機械仕掛けのヴァイオリンであるハーディ・ガーディを指すようになり、Leierはさらに転じて、ロールではなく円柱を回していた時代の「手回しオルガン」であるバレル・オルガンを指すようにまでなった。

演奏中のベルリラ

18世紀以降のヨーロッパにおいて、古代ギリシャはロマンの対象であり、こうした発想からか「古代ギリシアの竪琴であるリラを模した枠」をもつだけの手持ちの鉄琴に類する鍵盤打楽器としてベルリラまで現れ、これをリラなどと略されることでしばしば混乱を招いている[注釈 2]

歴史

ギリシア神話によると、リラを発明したのは若き神ヘルメースである。彼は大亀の甲羅 (khelus) を動物の皮革とアンテロープで覆った。リラはアポローン的中庸と平静さの徳と関連づけられた。これはディオニュソス的なが恍惚と昂揚と対照をなすものである。

この楽器の実際の起源としては、南欧、西アジア、北アフリカの各地が挙げられている。リラを持つ半神(英雄?)譚はリュディア帝国に接する小アジア(現在のトルコ)沿岸部のアイオロス系またはイオニア系のギリシア人植民地にみられる。また、別のギリシア人入植地であるトラキアオルペウスムーサイオス英語版タミュリスのような神話上のリラの名人の生まれ故郷であると信じられてきた。

古代ギリシア人がエジプトの箱形弦楽器をキッサルあるいはキタラと呼んだことから判るように、彼ら自身、ギリシアの楽器との類似性に気づいていた。古代エジプト文明の全盛期は古代ギリシア文明を遡ること5世紀であり、キッサルが生まれたのもその頃であろう。かくして我々は、リラの元となる楽器が古代ギリシア文明以前にギリシアの近隣諸国(トラキア、リュディア、エジプト)のいずれかに存在し、そこからギリシアにもたらされたのであると推論することができる。

徽章

リラは楽器の象徴で使われることがあり、欧米軍楽隊徽章になっていることも多い。

日本でも古くは帝国陸軍軍楽部襟部徽章 、および陸上自衛隊音楽科の職種き章になっている。また、消防音楽隊警察音楽隊海上保安庁音楽隊でもリラは徽章になっている。

構造

リラを演奏する女性。古代ギリシア風のポーズで1913年に撮影されたもの

リラのフレームは中空の共鳴箱からなっており、そこから2本の腕が立ち上がる。この腕も中空になっている場合がある。両腕はいずれも外側前方に曲がっていて、横木によって上端で連結されている。根元にも横木があり弦の振動を共鳴箱に伝えるブリッジになっている。上端の横木とブリッジまたはブリッジのさらに下にあるテイルピースとの間にガット弦を張る。各弦の長さは大きく異ならないが、単位長あたりの質量(太さ)と張力が異なる。これらの点は現代のギターやヴァイオリンといった弦楽器と共通である。最低音が奏者から一番遠くになるように構える。調弦法には2種類あり、竜頭を締める方法と、横木に弦をかける位置を変える方法があった。おそらくは両者が併用されたのであろう。

弦の数は時期によって異なり、土地土地でも異なったかもしれない。4、7、10弦のものが愛好された。指板が用いられたことを支持する文献的証拠は全く存在しない。弓が使われたこともありえない。平らな響板がそれを許さなかった(訳註、クラシックギターをチェロの弓で弾くことを想像せよ)。一方、は普通に用いられた。右手で持ち高音弦(弦の上部?)を弾いた。使用しない場合はリボンで楽器に結ばれていた。左手の指は低音弦(弦の下部?)に触れた。

英雄時代のギリシアでリラが何弦で調弦法がどうだったかを示す証拠はない。プルタルコスは、オリュンポステルパンデルは朗読会にわずか3弦のものをが用いたという。テトラコルドを2倍にすることで、4弦の楽器から7ないし8弦の楽器がもたらされたように、トリコルドと6弦のリラとが関連づけられる。この6弦リラは多くのギリシアの古い花瓶に描かれている。楽器の細かい部分をきちんと表現するのはいささか面倒なことである点を考えると、これが正確な描写であるとはいいきれないが、わざわざ異なった弦の数にするとも考えにくい。右手の撥で弾いた弦を、左手の指で押さえる姿が常に描かれている。古代ギリシア文明が今日知られているような姿をとる前は、リラの調弦においては幅広い自由と地域性が認められたのだろう。この点は古くから半音階や四分音が利用されていたことによって裏付けられており、いにしえの豊穣と、音調を洗練していこうとするアジア的な傾向とを示すものと思われる。

種類

リラは今日でも、ギリシャのいくつかの地方では主要な民族楽器となっている。例えばクレタ島や北ギリシア(マケドニア)のポンティア人地域である。このタイプのリラは奏者の大腿の上に垂直に構えられ、ヴァイオリンと同様に弓を用いて演奏される。

  • ギリシアの古典的リラ
  • 他の民族楽器
    • クレータのリラ
    • エチオピアのクラル (krar) - 5もしくは6弦の竪琴。エチオピアやエリトリアで使われる撥弦楽器。五音音階に調律される。現代のクラルにはエレキギターのようにアンプ(電気的増幅装置)のついたものも存在する。伝統的には通常、木製で、布・ビーズによって飾り付けをされる。 クラルはしばしば居ごこちのよい食事の楽しい付属物として、アズマリ (azmari) と呼ばれる楽器演奏家兼歌手によってラブソングと世俗的な歌に伴われ奏でられる。

現代のライアー

ゲルトナー・ライアー。39弦。1982年 ドイツ製。
ゲルトナー・ライアーのブリッジ部分

ライアーとはドイツ語で一般的に竪琴を指す単語であるが、ゲルトナー・ライアー(後述)以降の楽器は古代のリラの流れとは異なる新しい楽器としての固有名詞として定着している[1]。またドイツのライアー協会では「古代のリラとは楽器のタイプの類似があるものの、ライアーは新たな楽器である」という位置づけをしている[2]

ドイツの音楽家、エドモンド・プラハト (Edmund Pracht)はシュタイナー教育の影響を受け、オイリュトミーのための楽器を模索してい[3]。当時シュタイナー教育ではライアーよりも弦の少ないキンダーハープが使用されていた。またピアニストでもあるプラハトはオイリュトミーにピアノを使用していたが、ピアノの音は、感覚的に敏感な相手の場合は刺激が強すぎる場合があり[4]、その反応からオイリュトミーにはピアノは適していないという印象を持っていた[1]

1926年、プラハトと彫刻家のローター・ゲルトナー(W. Lothar Gärtner)により、現代的なライアーが誕生した[1]。治療教育にライアーが用いられた時の反応はピアノとは全く違ったものだったという[1]

このように現代のライアーは、形としては古代のリラの流れを汲むものではあるが、出自としてはシュタイナー教育のために作られた楽器であり、コンサートなどの演奏目的を主として作られたものではない[1]。長らく教育や治療のための楽器として存在し、演奏の芸術的な側面が注目されるようになったのは21世紀になってからである[2]

ゲルトナーは1938年にライアーのマイスターの称号を得る[1]。ゲルトナーによるライアーの系統は「ゲルトナー・ライアー」と呼ばれ、ゲルトナー・ライアーの派生として、ザーレム、ヨエックスがあり、その他、コロイ、アリウスなどがある。音域により、アルトやソプラノの種類がある[1]

ドイツのほか、イギリス北アイルランドオーストラリアチェコなどで様々なライアーが作られている[5]日本では1998年に泉本幸一により日本初のライアーが製作された[1]

また、ライアーとライアー・ハープは異なる別の楽器であり、ライアーと比較してライアーハープの多くは安価で、共鳴胴を持たない、弦の数が少ない、弦を張る順番が逆のため音の高低が逆となる、などの違いがある[6][7]

ナイロン弦が使用されるハープとは異なり、ライアーには金属製の弦が張られる。ブリッジ部分は弦が前後で段違いになっており、表面部分は右手で演奏しピアノでいう白鍵を、奥側は左手で演奏しピアノでいう黒鍵部分になるようにチューニングされる[8]。基準音となるA音(ラ)は440Hzではなく、シュタイナーが述べた言葉から432Hzにチューニングされることが多い[9][10]

ジブリ映画千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」は、木村弓によるライアーの弾き語りで演奏されており、その音色は広く親しまれている[11][12]

出典

  1. ^ a b c d e f g h 島崎篤子『日本におけるライアーの導入と広がり』岩手大学教育学部、2004年2月10日。doi:10.15113/00011402https://doi.org/10.15113/000114022022年12月1日閲覧 
  2. ^ a b Die Leier – Leier-Forum” (ドイツ語). 2022年12月1日閲覧。
  3. ^ 子どもの本とおもちゃ百町森. “キンダーハープとライアー:おもちゃ:百町森”. www.hyakuchomori.co.jp. 2022年12月1日閲覧。
  4. ^ ABOUT”. Atelier Ofton. 2022年12月1日閲覧。
  5. ^ 世界のライアーとその特徴”. leierkyokai.sakura.ne.jp. 2022年12月1日閲覧。
  6. ^ ライアー? ハープ? ライアーハープ? - ライア-(竪琴)大好き!~Tomoko Leier Salon へようこそ♪~”. goo blog. 2022年12月3日閲覧。
  7. ^ 公徳, 林 (2020年10月2日). “似て非なる ライアーとライアーハープについて”. アフロディーテの竪琴:ライアー専門店. 2022年12月1日閲覧。
  8. ^ ライアーの演奏 (ゲルトナーライアー) lyre”. www.musical.jp. 2022年12月1日閲覧。
  9. ^ 1 【ザーレムライアー】ライアーとは/ライアーについて ザーレムライアとローズウィンドウの専門店 ペロル”. perol.jp. 2022年12月1日閲覧。
  10. ^ 432Hz・ライアーで聴く美しの里|株式会社ケイ・アイ・エム公式| 音楽制作”. www.k-i-m.co.jp. 2022年12月1日閲覧。
  11. ^ ホーム”. My Site. 2022年12月1日閲覧。
  12. ^ ライアーについて(木村弓 Official Site)”. youmi-kimura.com. 2022年12月1日閲覧。

関連項目

外部リンク


引用エラー: 「注釈」という名前のグループの <ref> タグがありますが、対応する <references group="注釈"/> タグが見つかりません